インターナショナルスクールってどうよ -その1,概要編

先日、アボカドの種を取ろうと包丁でツンツンしてたら滑ってブサっと左手人差し指まで結構深く切ってしまい テンションが下がっています。さて、スイスに来て10ヶ月、実はもう船便の1発目が終わったりしてて 帰国ムードが漂う我が家ですが、ようやく書く気になってきたので書きます。 今は、子供を将来インターナショナルスクールに入れたいか、と言われるとうーんという感じで。

インターナショナルスクールって何それ?

ひじょうに雑に言うと、「義務教育ではないカリキュラムをベースに英語で授業をする 学費が異常に高い最近話題の私立の幼小中高一貫校」という感じです。"最近話題"とは、 第二次安倍内閣の経済政策アベノミクスにて成長戦略の三本の矢として策定された 「日本再興戦略」の目標の1つとして、

《KPI》「国際バカロレア認定校(2013 年6月現在:16 校)等を 200 校」

として取り上げられたからだそうです。 www.kantei.go.jp

なお、国際バカロレア(以下、IB)とは世界中のインターナショナルスクールが 標準とする教育カリキュラムです。日本の義務教育は6-3-3(年)ですが、 例えば息子の場合、幼稚園含めて8-5-2となっています。詳しくはwikipediaをご覧ください。

国際バカロレア - Wikipedia

話題といえば、最近軽井沢に全寮制のスクールが開校すると比較的話題だった気がします。

「ISAK」が求める生徒像とは〜小林りん氏に聞く | eduview

さらに、そこに"天才少年プログラマ"と呼ばれる山内奏人くんがクラウドファウンディングで 学費の支援を受けてサマースクールに参加したのは個人的にも胸熱な話題でした。

moon-shot.org

なお、息子は幼稚園と小学校が一体となっているPYP(Primary Year Program)の1年生、 8月始業なので日本の年少と年中さんにあたる子供たちがいるクラスに入学しました。 特に入試はなく、年間の学費は僕の大学4年間とほぼ同じです。。。まぁ会社持ちですけどね!

インターナショナルスクールはハイレベルな自立を求めている

年少-年中といえど、身の回りのことは極力自分でやることが求められます。主なものを上げると、、

  • 着替えは自分で、棚から取り出して片付けるとこまで
  • トイレも自分で行ってやって帰ってくる
  • 30-45分で句切られた時間割通りに頭を切り替えて行動する
  • 教室間の移動の際は、靴の履き替えをして他の子を待ち、並んで移動
  • 先生が読み聞かせをするときなど、じっと座って聞く
  • ドイツ語(第二外国語)とその文化的背景に意欲的に取り組む

ちなみに息子氏は上記がほとんど出来なくて問題児扱いされていました。緩和したけど今も。。 なお息子は5月生まれなので日本ではクラスの中でも大きい子、でしたがこっちでは早生まれ。 ですが、あまり月齢の差が考慮されている様子はなく、出来ないことは出来ないとビシっと 指摘されます。入学して最初の数ヶ月は、お迎えのたびに先生からその日の素行不良を 細かく指摘されてほんとに辛かったです。

なお、PYP4(小学生)以上になると毎日の家庭学習が求められます。学習の進度は日本より遅いのですが、 宿題は目標設定とその達成を非常に重要視しています。小学校から自分でPDCAを回す訓練をする。 学年が上がると「今年度中に〜」とか「夏休み中に〜」とかより長期の目標を自らたてることを求められます。 高い知識レベルを求める日本とは大きく異なると思います。とにかく自立的な学習姿勢をつける感じです。 スクールで家庭学習をテーマにしたワークショップ(親向けで月1回ある)に参加して聞きましたが、 そうしてIBを卒業して大学生になると、入学初日の授業から勉強を始めるそうです。同級生が 「あれ?宿題出てたっけ?」と聞くと彼らは「XXまでにYYの単元を理解しておきたいんだ」と。

マジか!

退学勧告マジかよ事件

入学から3ヶ月過ぎて、1四半期が終わると突然成績表みたいなものが届きます。メールです。 成績表といってもまだ学業があるわけではないので、8つの指標をもとに子供の良い所や 改善すべき点を先生が細かく記載してあります。ちなみにPYP1の子供は他者との関係性を学ぶのが 大きなテーマなんですが、その8つとは、 Confidence/Enthusiasm/Curiosity/Cooperation/Respect/Commitment/Creativity/Independent とあり、息子氏は特に他者との関係性や自立の面で問題があったのでRespectとIndependentのところが アドバイスてんこ盛りだったわけです。でまぁ、日々の先生からの指摘も多かったので 頑張って直さないとな、てか何を頑張ればいいのやら。。くらいに思っていました。

しかしその数週間後に、突然校長との面談をセットされ行ってみると 「あなたたちの息子の発達の遅れと問題行動は学校として看過できない、退学の方向で考えてくれ」 的なことを言われたのでした。発達の遅れとは、自分からトイレを言い出さないし、着替えも出来ないから 常に教師のサポートが必要で困る、というもの。そして問題行動とは、他の子供や先生に頭突きしたり 叩いたりして教室の安全が脅かされている、というもの。 ある程度お叱りを受ける面談と想定していたものの入学3ヶ月で退学を勧められたことに、驚きを隠せない とはまさにこのことでした。

実際息子氏はどうだったのか

通っているスクールでは日本でよくある連絡帳的なものが無いので、毎日の先生との会話によって 唯一子供の素行を知ることができます。ちょっと不便ですが、知りたかったら聞きましょう、です。 で、よーく聞いてみると

  • 着替えがうまく出来なくて助けを求めてくることが多い
  • トイレはおしっこは言ってくるときもあるが、うんちは全然だめ
  • 時間割の切り替え時にイヤイヤすることが多い
  • ぜんぜん整列しない。他の子を待てない。
  • 特に読み聞かせや音楽など授業形式のときにじっと座ってられない、ごろごろしだす
  • 上記イヤイヤ時に、先生を叩いたり頭突きすることが多い。他の子に手をだすこともある。

改めて文字にすると全部ダメで泣きそうです。ただ、実は家庭内とは少し様子が違うことも 分かりました。家庭内では、着替えやトイレについては時間はかかるもののほぼ問題なく 一人でやっていたのです。また、いっときは頭突きや叩くことを僕や妻にしてきていましたが、 そのたび結構きつく言っていたので家では全然やっていなかった。。。これ何が原因だろうか。 もうまったく分からなくなりました。

どんな対策をしたか

まず退学勧告への対応については、何とかなりました。 妻が会社の多くの同僚の方々に相談して、みんな異口同音 「3歳児でそれでやっぱいきなり退学は無いでしょ」ってことで、人事部を通して抗議してもらい、 結局経過観察することになりました。その際、妻の上司やホームパーティーで息子を知っている メンターの方などは、「俺が同席してやるから任せろ!」など大変心強い協力をしてもらいました。 僕も、同校に通う日本人のママの方々に相談しました。もと幼稚園教諭の方やインターナショナルスクール 経験の長い方のアドバイスももらいました。いろいろ伺った他の方の経験を参考にすると、 邪推ですが、僕らが1年未満で出て行くことが決まっていることや、現在の校長先生が1年任期の 暫定ポジションゆえにコンサバな管理者であることで、より大きな問題がおきるまえに退学にもっていこう としたんじゃなかろうかと思っています。
とはいえ、先生の言っていることが6-7割程度しか分かってない 自分の英語力と日々耳の痛い話でサンドバック状態だったから、素行不良について状況や原因のようなものを 聞き込んで無かった自分には反省が多いと思ってます。問題児の親になってみて分かりましたが、 やはり可愛い我が子のことは最後まで信じたいので、なかなか現実に向き合えませんでした。

さて、素行不良への対策です。家庭との息子の様子の違いは何から起こるのか。放課後の教室や校庭とかで 息子や同じ学年の子を見る限り、他の子とのおもちゃの取り合いや押したり叩いたりみないなのは 大差なく同じレベルの様子。ある日本人のママの言葉がヒントになりました。

「着替えやトイレでサポートを受けてるってことは、そのサポートを受けたり先生の手が空くまでの間、 ずっと待たされてるんじゃないかしら。それってストレスかもね。他の子は次の遊びしてるはずだから」

あぁぁぁぁおーー、そうか。そりゃそうだ!

というわけで、一度は完了したと思っていた(そこが甘かった)トイレと着替えについて よりストイックに家庭で取り組むことになりました。さらに、毎日の時間割は決まっているので 妻がそれを4コママンガ的なペラ1として作り、前日の晩や当日朝に説明することにしました。 また、先生も特別に連絡帳を作ってくださり、毎日の素行を詳しく教えてくれるようになりました。


*時間割ペラ1。上段左から図書館の日、集会の日、ITの日など。

その結果、もう3ヶ月くらいたちますが、ずいぶん良くなっています。 未だに授業形式の時間では英語が分からないのもあり、集中が持たないようですが、 1週間まったく問題なく過ごす日もたまにあります。

インターナショナルスクールに子供が通うということ

僕がスイスに移住すると決まったとき、子供のことを心配すると 「子供はすぐに環境に慣れるし、英語もすぐ覚えるだろうから心配ないよ〜」 といった話がよくあり、僕もそう思ってましたが、半分正解、半分間違いと思います。 息子に限らず同校の日本人の子供を見ていて、新しい環境に適応するには子供にとっても 大きなストレスを伴うものなのだな、と改めて思っています。

新しい環境への適応については、カルチャーフィットの曲線というものがあり、 W型の曲線で時間の経過とともに2回落ち込む辛い時があると説明されています。 自分の転職時を思い出してもよく当てはまる気がします笑

https://fsbaggage.files.wordpress.com/2015/08/cultural-adjustment-curve.gif

この曲線が、子供の場合は時間軸(横軸)が相当短くなっているんだと思います。 ただし、日々の生活の違いにストレスを感じイライラする(1つめのコブ)し、 文化的だったり個人的な行動様式の違いによる課題に深く直面(2つめのコブ)する のは確実で、そうしたストレスを一緒に分かち合って成長を促す努力が 親にも相当必要になると思っています。

余談ですが、インターナショナルスクールにも言葉や行動が暴力的な噂の問題児、 というのは若干はおりそうした子と我が子が一緒にいるとみんなそれとなく注視しています。 そうした子供を見ていて共通するのは親の関心や監督姿勢が(とっても)薄いことです。 子供は良くも悪くも色んな方向に成長できる不安定さを持っていると思うので、 暗黒面に堕ちないように注意したいものです。その点で、今回はいい経験が出来ました。

次回は、件の対応で頑張った我が家のトイレトレーニングとお着替え全貌を書こうと思います。その次は子供の英語ネタかな。