退職してスイスで主夫します

30代会社員(男)です。このたび会社を辞めて主夫になることにしました

今月3月末をもって現在の会社を退職し、4月からスイスで1年間限定ですが主夫になることにしました。先週末3月13日の金曜日が最終出社日なので、今は有給休暇を消化する日々に入っています。元々僕も妻もフルタイムで働く共働きで、かつ夫婦の両親ともに地方在住のため、必然的に僕も平日は3-4割、休日は5割くらい家事育児をやっていました。また妻のキャリア観の影響もあり、僕の唯一ともいえる拘りとして「男女関わらず家庭で仕事で活躍できること」というのがあり、そこに向かって走っていたら、いつのまにか共働きのはずが主夫になることを選択していました、というわけです。

今回の僕の選択は、少なくとも僕の周囲をみる限り相当レアケースのようなので、僕を知るかたと、そのお知り合いで主夫や育休などに不安や興味のある方含めて、何かお役に立てればと思い書いてみようと思います。

おまえだれよ

会社員(30代男性)です。妻と保育園に通う子供の3人で暮らしています。僕は大学院まで理系で、公共関係の業界のとある研究をしていたのですが、そのとき研究していたIT技術、今でいうビッグデータ解析の効用に感銘を受けIT業界に就職しました。そしてその会社で最初の4年半は製品技術や仕様を担当するエンジニアとして過ごし、その後転職して今日までの2年半はクラウドの会社で営業と技術営業を半々くらいやらせてもらいました。ちなみに会社のルールとか色々あり、最後の職場ではパブリックな発表は一切やっていませんので初めての仕事に関わるブログ公開に内心不安です。両親はいずれも地方なので、夫婦どちらかの出張がない限りは基本的に3人家族の共働き子持ちといういわゆるDEWKs(Double Employed With Kids)です。なお厚生労働省労働力調査(1)によると、日本は1997年以降、夫婦によって構成される世帯のうち過半数が共働きであり、その割合は増え続けています。DEWKsの比率は分からなかったのですが、OECDの調査(2)によると欧米諸国に比べて日本では小学校未就学児を持つ母親の就業率はずいぶん低いようです。
(1) 共働き世帯の増加
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/dl/s0224-8h_0005.pdf
(2) The OECD Family Database https://www.uclouvain.be/cps/ucl/doc/demo/documents/Thevenon_Base_OCDE.pdf

どうして主夫なのか

4月からは文字通り主夫、専業主夫になります。妻が会社のスイス拠点へ出向するための海外赴任が理由です。こうした海外赴任があることは実は前から知ってはいて、初めてそうしたプログラムを聞いたときには僕も「めっちゃいいじゃん!もし話が来たらすぐOKしてよ。おれすぐ仕事辞めてついていくし!主夫するよおれ〜ははぁ〜ん!」と言っていましたし、わりと本気でそう思っていました。それが予想以上に早く来たんです。しかも自分の仕事が面白くなってきた段階で...。妻から昼間に突然のLINEが来たのが去年2014年の9月中旬。「パパ!」「パパ、大変な辞令を言い渡された...」で始まったLINEはその後100分ほど続き特に後半僕は妻に「俺の仕事はどうなんのよ!あぁ!?」などなどとひたすらキレていました。その日は、遅めの夏休み休暇を取って家族でディズニーランドへ泊まりがけで遊びに行く前日。僕は1日早く休暇をとって歯医者の検診を済ませ、さぁ久しぶりに1人での買い物を楽しもうと電車に乗ったところに知らされたのでした。その後の夢の国でのひとときはもちろんですが、そこから年明けにいたるまで、なかなか眠れない日々が続きました。眠ろうにも「この人(妻)に付いていって大丈夫なのか、自分はこれでいいのか」と思いがめぐり、寝るためにウィスキーを飲む日が続きました。まるでマリッジブルーです。

退職を決意した理由

退職を決意した理由は大きく2点あります。1つはこれは自分の育った環境の影響かもしれませんが、子供は両親とともに生活したほうがよい、そして夫婦も同居したほうがよい、という僕の考えによる点。妻が単身赴任する、あるいは妻が子供を連れていき僕が1人で日本に残る、ということはどうしても選べませんでした。そしてもう1つは、共働きとして夫婦のキャリアの長期的な市場価値の合計値の最大化を考えた点です。正直に言うとこの海外赴任は妻にとっては確実にプラスなものの、僕にとっては今なおプラス要素があるのかは見えていません。でもマイナスではないだろうと思うには至りました。昨年9月のあの日、というかあの100分のLINEの中ですでに選択肢としては、自分が主夫になりスイスに行くことが最も現実的に思えていました。あとは、それが自分のキャリアにとってマイナスにならないか、そもそも1年後に自分が思うように復職できるか確認することが必要だと感じていました。
そこで、僕はその当日から伝手をたどり、自分と同様の選択を過去にした人がどうなっているか、僕の選択を周囲の人がどう思うか聞いて回っていました。その結果、ある意味不可抗力による1年程度の離職は、誰も気に留めない、むしろ相談や打ち明けた数十人の方の9割方が「とても羨ましい」という感想だったので、これは楽観視してもいいんじゃないかなと思えたのです。「羨ましい」と言った方の多くは、恐らく以前の僕のように「ヨーロッパで家庭に入って家族とゆっくりとした時間を過ごす」というメリットについて羨ましいと感じている一方で、そもそもやっぱりそれ以上に主夫になるということを想像して理解することが非常に難しいのだと思いました。これは言い換えると、誰も主夫になるということを簡単には想像できないので少なくともマイナスイメージは浮かばず、さらに納得のいく説明が出来ればプラスにもなり得る、と理解しました。これは人の流動性の高いWebサービスの業界ならではなのかもしれませんが、こうなればあとはこの主夫として過ごす1年間に何をするかを考えれば良くなります。
ただ、海外赴任のくせに少なくとも語学の向上については期待できません。スイスのドイツ語圏に住むため役所や普段の買い物などは全てドイツ語、医者に係るときでさえ「英語が話せる医師はいますか?」からスタートするそうなので英語が上達する機会は無く、一応公用語なのでドイツ語スクール等に通う予定はあるものの...まだ何をすべきかについては答えは出ていません。とはいえ、英語については妻の同僚とのホームパーティや子供のスクールの人と話すために必要なので、この有給休暇の機会に英会話教室に通って特訓中です。ここでの学びは別途改めて書きたいと思います。

子供のこと

子供にとってはプラマイゼロか若干マイナスだと思っています。今はようやく文章として日本語を話せるようになっており、保育園でも他者と遊ぶことが中心になり社会性を身につけ始める年齢です。子供は英語がメインのスクールに通う予定ですが、どうしても日本語は忘れるし、英語も中途半端に覚えて帰る、何より当面はスクールで他の子供と意思疎通が上手く出来ない。それでも僕と2人きりで平日ずっと過ごすよりは、思い切り歌ったり踊ったり体を動かし、同年代の子供とコミュニケーションをとる時間があったほうが良いと思うのでスクールに通わせるんですが、出来れば日本語のスクールがあれば良かったです。「お子さんもこれでバイリンガルだね〜」と言って頂けたりするんですが、僕は”臨界期”を意識するような子供への早期教育にはどうしても懐疑的なので嬉しくはありません。このあたりは、子供の英語習得と併せて別途書いてみたいのですが、ご興味あれば下記書籍もどうぞ。

なお子供も一旦保育園を退園するので、帰国した際にはもう一度保育園に入れてもらうよう交渉しなければいけません。また帰国の時点では僕はまだ主夫かもしれないので保育園に入るのには不利な状況といえます。このような一度離職することによって復職の可能性が遠のくリスクは実際体感すると恐怖です。

お金や資産のはなし

やはり税金とかお金のことも良く聞かれるのですが、面倒で重たいのはまず住民税です。住民税はもともと後払いの税金なので、今年度の所得をもとに今年の6月から来年5月までの分について確実に支払う必要があります。しかも、会社で給料天引きできなくなったので、毎月ではなく年4回にまとまってやってきます。これだけは避けようがなく重たいです。一方で他の税金や年金、手当てなどは日本の非居住者となった時点で支払いの義務や受給資格が失われるので、わりとシンプルです。あとは、株や資産運用などで別の所得が発生する場合には確定申告する必要は出てくるかと思います。
他は自分が原因の奨学金、生保、学資保険あたりです。このあたりは個人差が大きいのですが、僕の場合満期まで解約金返戻金が極僅かで解約しずらい養老保険と、大学院まで利用していた奨学金がちょっと痛いです。自分が30代くらいで無収入になるなんて想像していませんでしたから。また収入を失って体感できたのですが、奨学金は名前こそ美しい響きですが、ただの教育ローンなんですよね。名前変えたほうが良いです。痛すぎます。ここは今振り返ればですが、ローンなんだからもっと厳格に利用額を決めるべきでした。 あと、車は実家に送り、自宅マンション(持ち家)は不在の間友人に月1くらいで見に来てもらうことにしています。

これから

長々と自分のことばっかり書きましたが、色々と理解を下さったお客様はじめ会社の方々、友人や相談に乗って下さったみなさまには大変感謝しております。ありがとうございます。書いていても色んな思いが錯綜してうまく書けていないところもある気がするので、適宜補足など書いたり話したりしたいと思っています。そうした情報がこれから主夫や長期の育休を取ろうと考えている方にとって少しでも希望のもてる話になれるととても嬉しいです。
今後はお気楽な主夫ブログを書いていこうと思います。どうぞよろしくお願いします。